近所のコンビニで働いているずるぷかる君がどこの国から来て、何でコンビニで働くことを選んだのか考えるために、今日もそのコンビニに煙草を買いに行くけれどずるぷかる君はいなくて、新顔で中国から来たと思われる店員が働いていた。コンビニでしか会えないずるぷかる君がコンビニにいない時、君が何をしているのかを知る術はない。
母は「私はホタル族だから」と述べた。夜、ベランダで煙草を吸う人をホタル族と言うらしい。一時だけ放たれる光は母の手元から生まれたものだ。その光を頼りにする虫もまた夜になるまでどこで眠っていたというのだろうか。
パソコンの容量を空けるために様々なフォルダを開いた。気づかないうちに何層もの階層が用意されており、その奥へ奥へと辿ってゆく。その中で「兄より.txt」というファイルを見つけた。一時期だけ兄にパソコンを貸していたことがあって、ファイルは2013年12月10日、23:15:53に作成されていた。パソコンを貸したことへの感謝と家族への心配と、最後に、これらのことを口頭で伝えることへの照れくささが述べられていた。
そう言えば、兄を想って作った詩を乗せた同人誌を「とりあえず、これ」とか渡したことがある。「弟は兄の真似をすることしかできない」とかそんなことを書いた気がする。そうか、同人誌を渡した時の心境もまた「兄より.txt」を残した兄の心境の真似だったのかと2017年7月15日になって気づいた。この時、隣の部屋に兄はいなかった。
初めて家族の前で煙草を吸ったのは、2015年1月に沖縄へ家族旅行に行った時のことだ。煙草を吸っていることを家族に知られてはいたが、その姿は見せないようにしていた。だけど、旅行ともなればいたしかたなく、母親に薦められたものだから、なおいたしかたない。おそらくあれが最後の家族旅行となるのだろう。約15年の時を経て、沖縄に戻ったあの旅行が最後の家族旅行となるのだ。
ずるぷかる君にはわからないだろう。僕がいつも「49番を2つ」という時の震えがわからないだろう。それと同じように僕は、ずるぷかる君がどこの国から来て、何でコンビニを働くことを選んだのかがわからない。
一つだけ教えるとしたら、煙草を吸い始めたのは少女との約束を守るためだったこと。だから、僕と結婚する人にお願いしたいのは、僕の喫煙を辞めさせて欲しい。そうすれば少女との約束を破れるから、奥さんと子どもを沖縄旅行へ連れて行こうと思う。その時、右手に握られているものが何であるかを今は知る由もないのだ。
「弟より.txt」
今日、知り合いから「深夜高速」という歌があることを知らされました。サビは「生きてて良かった」が繰り返され、「そんな夜を探してる」「そんな夜はどこだ」と繋がります。これは、歌手自身が「生きてて良かった」ことを探すのですが、「生きてて良かった」のは何も「私」=「歌い手」だけではないんだと思います。僕はそんな夜をもう見つけています。だから、僕はあなたにこの歌を聞かせたいのです。どっかの歌手が歌っているのではなく、精一杯僕があなたに歌いたいと思います。「生きてて良かった」と。
なかたつ
現代詩投稿サイト「B-REVIEW」より転載
2017
「縁」は現代詩投稿サイトB-REVIEWで2017年7月B-REVIEW杯に選ばれた作品です。
B-REIVEWは現代詩の投稿サイトで、掲示板による詩の合評を行っています。今、大変熱く盛り上がっています。
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今回当サイトでは、その内の幾つかを掲載させていただくことになりました。
協力しあいながら、現代詩の世界を広げていけたら、と思っております。