タンポポ

わたしのタンポポは
とおいとおい
ひとかたまりの
「昔」のなかから咲く
いつのこととも
なにのこととも
もう皆目くべつできない
ただなにかしら甘ずっぱい
とろとろとなまあたたかい
「昔」のなかから咲く
少しずつ
だが着実に去っていく
わたしのなかの「昔」を
ひきとめようとするように
それはいつも あどけなく輝いて
それは永遠の子どものなりをして
とおいとおい
ひとかたまりの
もどかしいなつかしさとわびしさに
つつまれた「昔」のなかから
わたしのタンポポは
今年も咲いた

征矢泰子
「砂時計」所収
1976

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