ラヴレター

何の言葉も書かれていない。
宛名と差出人の名と消印、
ただそれだけだ。

異国の街からの一枚の絵ハガキ。
木立の中の朝の光り、
尖塔と走る犬。

あとは何も書かれていない。
ただ沈黙だけが
そこにくっきりと書かれている。

他の誰れも書くことができない
言葉にならない言葉、それは
きみしか読むことができない。

長田弘
メランコリックな怪物」所収
1973

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