石見の海
角の浦廻を
浦なしと
人こそ見らめ
潟なしと
人こそ見らめ
よしゑやし
浦はなくとも
よしゑやし
潟はなくとも
鯨魚取り
海辺を指して
和田津の
荒礒の上に
か青なる
玉藻沖つ藻
朝羽振る
風こそ寄せめ
夕羽振る
波こそ来寄れ
波のむた
か寄りかく寄り
玉藻なす
寄り寝し妹を
露霜の
置きてし来れば
この道の
八十隈ごとに
万たび
かへり見すれど
いや遠に
里は離りぬ
いや高に
山も越え来ぬ
夏草の
思ひ萎へて
偲ふらむ
妹が門見む
靡けこの山
柿本人麻呂
「万葉集」所収
759
石見の海
角の浦廻を
浦なしと
人こそ見らめ
潟なしと
人こそ見らめ
よしゑやし
浦はなくとも
よしゑやし
潟はなくとも
鯨魚取り
海辺を指して
和田津の
荒礒の上に
か青なる
玉藻沖つ藻
朝羽振る
風こそ寄せめ
夕羽振る
波こそ来寄れ
波のむた
か寄りかく寄り
玉藻なす
寄り寝し妹を
露霜の
置きてし来れば
この道の
八十隈ごとに
万たび
かへり見すれど
いや遠に
里は離りぬ
いや高に
山も越え来ぬ
夏草の
思ひ萎へて
偲ふらむ
妹が門見む
靡けこの山
柿本人麻呂
「万葉集」所収
759