ぐりまは子供に釣られてたたきつけられて死んだ。
取りのこされたるりだは。
菫の花をとつて。
ぐりまの口にさした。
半日もそばにいたので苦しくなつて水にはいつた。
顔を泥にうづめていると。
くわんらくの声々が腹にしびれる。
泪が噴上のやうに喉にこたへる。
菫をくはへたまんま。
菫もぐりまも。
カンカン夏の陽にひからびていつた。
草野心平
「第百階級」所収
1928
ぐりまは子供に釣られてたたきつけられて死んだ。
取りのこされたるりだは。
菫の花をとつて。
ぐりまの口にさした。
半日もそばにいたので苦しくなつて水にはいつた。
顔を泥にうづめていると。
くわんらくの声々が腹にしびれる。
泪が噴上のやうに喉にこたへる。
菫をくはへたまんま。
菫もぐりまも。
カンカン夏の陽にひからびていつた。
草野心平
「第百階級」所収
1928