童話

眼が見えなくなる
ゆっくりだけれど 見えなくなる日がくると白衣の先生が言った

眼の見えなくなったときひとつのことを言おう
〈あなたが好きでした〉
好きなひとの見えなくなったとき
ひまわりを見上げている少女のように明るく
〈あなたが好きでした〉

見えていたときには言えなかった言葉を
一度だけ言う それから忘れてしまおう

見えなくなった眼に咲くひまわりは
闇にいつまでも寂しいだろう

大倉昭美
「あなたへの言伝」所収
1990

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