校庭の センダンの大木の下に
まごみたいな
小さいセンダンの木が 生えていた
木の好きな母さんに
持って帰ってあげたら
ベランダの植木鉢で
たいせつに育てるかもしれない
そう思って 一気に抜こうとしたが
葉を二、三枚しごいてしまっただけで
根は びくともしない
かんたんなことじゃ ないんだな
ここに根付いている ってことは──
ぼくなんか ふらふら
どこへでも行っちゃいそうだもんね
みちみち 考える
あの幼い木は
しんぼうづよくあそこで育って
やがて大木になり
青空にてっぺんを届かせるだろう
たくさんの小鳥たちを遊ばせてやり
風が運んでくる 遠い国の出来事にも
耳をかたむけるのだろう
その頃 ぼくは
どんなおじいさんになっている?
新川和江
「名づけられた葉なのだから」所収
2011
「その頃 ぼくは・・・」は新川さんの許諾をいただいた上で掲載しております。
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