私は来るのを待っています。
青い間から
大手をひろげて私を抱きあげてくれるものを待っています。
ねてもおきても窓を開けはなって
祈るようにほおづえをついて
いつも空ばかり見つめています。
それより他に方法はないんだと思っています。
あんまり一面に青い日は
私は悲しくて口笛や歌ばかり歌って何も考えまいとします。
それは青さがあまりにもはてしなく
待つことしか知らない私があわれに無力になってしまうのでヤケになるからです。
どうして私は待つことしか知らないのでしょう。
待つことは悪いことでしょうか。
自分でもわからないのです。
私は乞食かもしれません。
空を見つめて肉の切れはしが落ちてくるのを悲しんだり胸をときめかして待っている
最もいやしい怠け者の乞食かもしれません。
矢沢宰
「光る砂漠」所収
1967