烏百態

雪のたんぼのあぜみちを

ぞろぞろあるく烏なり

 

雪のたんぼに身を折りて

二声鳴けるからすなり

 

雪のたんぼに首を垂れ

雪をついばむ烏なり

 

雪のたんぼに首をあげ

あたり見まはす烏なり

 

雪のたんぼの雪の上

よちよちあるくからすなり

 

雪のたんぼを行きつくし

雪をついばむからすなり

 

たんぼの雪の高みにて

口をひらきしからすなり

 

たんぼの雪にくちばしを

じつとうづめしからすなり

 

雪のたんぼのかれ畦に

ぴよんと飛びたるからすなり

 

雪のたんぼをかぢとりて

ゆるやかに飛ぶからすなり

 

雪のたんぼをつぎつぎに

西へ飛びたつ烏なり

 

雪のたんぼに残されて

脚をひらきしからすなり

 

西にとび行くからすらは

あたかもごまのごとくなり

 

宮沢賢治

文語詩未定稿」所収

1933

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