ずっと ずっと むかしから
北海道に住んでいたアイヌの人たちは
いろりの火のそばでも 家のなかでも
川でも 野でも 森でも 狩りのときでも
いつも神さまといっしょだったって
その姿は見えないけれど
いつも神さまといっしょだったって
だから たとえばさ
夜 川の水をくむときは
まず水の神さまの名前を呼んで
神さまを起してから くんだんだって
神さまも夫婦で住んでいるから
お二人の名前を呼んだんだって
でもさ
子どもが川におぼれたりすると
ちゃんと見張っていなかったからだと
水の神さまは いくら神さまでも
人間からしかられたんだって
川崎洋
「しかられた神さま」所収
1981