砂塵を浴びながら

松毬で作られた
雌鳥と雛のコレクションを置いて
その男は、去つて了つた。

女性とは、雌鳥に過ぎない
卵を孵化し、ひなを育てる
矮鶏のめすに過ぎない! と。

君よ、立止まれ
実に、松毬は母を想ふまい
だが、あなたは、あなたの母を念はないか。

私は、
さう! 雌鳥ほどにうつけ者だつた
男らの言ふことを、いつも本気で聞いてゐた
だが、信じる者と、偽る者と
何れが、真の不幸者であるかは宿題だ。

祈りを識る、めんどり
切な希ひを有つ、めんどり
いつも青空を凝視する
太陽を思ふ
恥を知る雌鳥は
砂塵を浴びながら、ものを念ふ。

英美子
「美子恋愛詩集」所収
1932

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