夕陽に顔面

長い黒髪 風にゆらめかせ
女子高生 夕陽を望む
滑らかな曲線を描くシルエットが
逆光によって赤い校庭に写し出される
女子高生は
ゆっくりと
こちらを向いて
その顔面が落ちる
ストンストンと真っさかさま一直線に落ちる
何枚も落ちる止まることなく地面に落ちる
落ちて入れ替わって落ちてこちらを見つめてくる顔面は無い
落ちる落ちる落ちる奇術のマスクのように落ちる
落ちる落ちる落ちる滝のように目まぐるしく落ちる
静止した胴体と反して次々変わる顔面の状態
周りの風景もいつの間にか激しく変わりだす
空は絶え間なく256色に移り変わり
早送りのよう雲は飛び月陽星々は回り続ける
ついに女子高生のハイソックスの縁から虹色の水が溢れだし
爪はどんどん伸びていって蛇のようとぐろを巻いていく
すべてが落ちて変わって飛んで回って動いて暴れて暴れて暴れて
百面相の顔面は険しい山を盛り積み造りあげているが
ただひとつ女子高生の胴体だけは
静止して
動かない
それ以外の全世界は恐ろしい速度で変化し続ける

祝儀敷
現代詩投稿サイト「B-REVIEW」より転載
2017

2 comments on “夕陽に顔面

  1. 「夕陽に顔面」は現代詩投稿サイトB-REVIEWで2017年3月B-REVIEW杯に選ばれた作品です。
    B-REIVEWは現代詩の投稿サイトで、掲示板による詩の合評を行っています。今、大変熱く盛り上がっています。
    URLは下記です。

    http://breview.main.jp/index/

    Twitterはこちら

    @breview_jp

    今回当サイトでは、その内の幾つかを掲載させていただくことになりました。
    協力しあいながら、現代詩の世界を広げていけたら、と思っております。

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