白い犬

湖が急に見えなくなってしまう曲り角
雨戸を二枚しか開けてない家があって
雨が細かく沢山降り出して
傘がなくて
それでも歩いていると
白い犬が濡れてとことこ通った
泥だらけになって
もう仕方なさそうな顔をしていた
棄てられた犬かと思っていたら
どこかでメリーメリーと呼んでいる
呼ばれても振りかえらずに
濁った水の流れる溝のへりを
何ということもない顔して
そのまま行ってしまった白い犬
あそこは湖が見えなくなる曲り角
音のない雨に濡れていた

串田孫一
「羊飼の時計」所収
1953

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