梅ちやんの家は焼けた。
ぼくと遊んだ頃の
婆さんは死に
爺さんひとり居る藁家で
春の雪どけの晩
爺さんが酒をのんで火をだした。
火を吹いて 吹いて
あの藁家が崩れた。
春になつて 草がまつ蒼にのびた頃にも
焼けあとには黒い掘立杭が立つてゐた。
ぼくが十八の春、
梅ちやんは小樽のげいしや。
あの藁家は燃えちまつたよ。
伊東整
「雪明りの路」所収
1926
梅ちやんの家は焼けた。
ぼくと遊んだ頃の
婆さんは死に
爺さんひとり居る藁家で
春の雪どけの晩
爺さんが酒をのんで火をだした。
火を吹いて 吹いて
あの藁家が崩れた。
春になつて 草がまつ蒼にのびた頃にも
焼けあとには黒い掘立杭が立つてゐた。
ぼくが十八の春、
梅ちやんは小樽のげいしや。
あの藁家は燃えちまつたよ。
伊東整
「雪明りの路」所収
1926