冬が終る。そこに誰かが立つてゐる。鴉が遠くで啼いてゐる。私は荒い日差しのなかで、足を引き摺つてゐる。
 彼等は晴れた空のなかにたくさんの巣を作つてゐる。彼等はまた湿つた砂地の上にたくさんの栖居を作つてゐる。──私には、ただ私の死後のしづけさが動いてゐる。

 私の身支度。──植込の草花は、みんな長い頸が折れて、みだれた添竹の向き向きに枯れてしまつた。

菱山修三
1967

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