濡れた草場にかくれて
僕の くりかへした
さまざまの 窮屈な姿勢は
何とみじめにこころよかつたことか
誰からも見られてゐない確信と
やがて 悔ゐへの誘ひと─
その時 真昼が
匂ふやうであつた
太陽は甘く媚び
戦ぎはいつしか絶え…
小鳥の唄だけ 遠く囁いてゐた
ああ 聖らかな
逃れ去り行く 繋がれてあるこの一刻
この欲情のただしさを
立原道造
「萱草に寄す」所収
1937
濡れた草場にかくれて
僕の くりかへした
さまざまの 窮屈な姿勢は
何とみじめにこころよかつたことか
誰からも見られてゐない確信と
やがて 悔ゐへの誘ひと─
その時 真昼が
匂ふやうであつた
太陽は甘く媚び
戦ぎはいつしか絶え…
小鳥の唄だけ 遠く囁いてゐた
ああ 聖らかな
逃れ去り行く 繋がれてあるこの一刻
この欲情のただしさを
立原道造
「萱草に寄す」所収
1937