雨の日の暮は暗く
部屋のすみ襖のかげの
座ぶとんに寝かせてならぶ
首だけの人形の顔
姫は口もとに紅をはき
役者の顔のくまどりに
千代紙のころもを着せる
鋏の音と姉のためいき
着せかえた人形たちの首を抜き
すげかえ遊ぶたそがれどき
虚構に生きる人の世の
はなやぎは一瞬にして地におちる
白装束に着せかえて
経帷子に箸の杖
紙箱の棺に寝かせて掌を合わす
とむらいさえも遊びであつた
斎藤怘
「葬列」所収
1969
雨の日の暮は暗く
部屋のすみ襖のかげの
座ぶとんに寝かせてならぶ
首だけの人形の顔
姫は口もとに紅をはき
役者の顔のくまどりに
千代紙のころもを着せる
鋏の音と姉のためいき
着せかえた人形たちの首を抜き
すげかえ遊ぶたそがれどき
虚構に生きる人の世の
はなやぎは一瞬にして地におちる
白装束に着せかえて
経帷子に箸の杖
紙箱の棺に寝かせて掌を合わす
とむらいさえも遊びであつた
斎藤怘
「葬列」所収
1969