あざらしの夫婦が並んで死んだ
永い旅から帰ってきたら
何の腐爛も起さずに
雌は立派に立ったままで
眼から氷柱を垂らしていた
犬が食ってしまったらしい雄は
赤い泥のような小さな糞となり
クレパス沿いに点々と並び
一番新しいらしいのが
一本湯気を立てていた
犬塚堯
「南極」所収
1968
あざらしの夫婦が並んで死んだ
永い旅から帰ってきたら
何の腐爛も起さずに
雌は立派に立ったままで
眼から氷柱を垂らしていた
犬が食ってしまったらしい雄は
赤い泥のような小さな糞となり
クレパス沿いに点々と並び
一番新しいらしいのが
一本湯気を立てていた
犬塚堯
「南極」所収
1968