自分が机に向っていると
こんなことを囁く奴がいる
「お前は何時までも生きるつもりでいるのだね、何時までも」

「いいえ」と自分は云った、
「それでも五十までは生きる心算だろう」
とそいつは云った。

「さあ」と自分は云った、
そうして少し不安になった。
「生きられませんか」自分は小声で聞いた。

「さあ」とそいつは笑を帯びて云った
そうして何処かへ行ってしまった。

武者小路実篤
武者小路実篤詩集」所収
1953

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