夢のなかでだけわたしは
叫ぶことができた
目尻に涙をひきながら
衿をたてて
停車場の角をまがる
するといつも 列車はうしろ姿なのだった
世界がわたしを包んでいるのに
わたしののばす腕は
いつも そのふちにとどかない
世界が あまりうつくしいので
目ざめて わたしは 名を呼べない
もどかしい自転車 だけが
枯れた桑畑の道をはしる
吉原幸子
「魚たち・犬たち・少女たち」所収
1975
夢のなかでだけわたしは
叫ぶことができた
目尻に涙をひきながら
衿をたてて
停車場の角をまがる
するといつも 列車はうしろ姿なのだった
世界がわたしを包んでいるのに
わたしののばす腕は
いつも そのふちにとどかない
世界が あまりうつくしいので
目ざめて わたしは 名を呼べない
もどかしい自転車 だけが
枯れた桑畑の道をはしる
吉原幸子
「魚たち・犬たち・少女たち」所収
1975