大きい田舎の女を

 われわれは

大きい田舎の働き盛りの女を賛美する

夏草のやうな力と新しい情熱を

野薔薇をふみしだく大きい足を

四五人の子供を果実のやうにぶらさげる

円い酒甕のやうな乳房を

大雨に濡れて焔の藪のやうに乱れてゐる真黒な髪を

血で燃えた車の屋羽根のやうな手を

森のやうに笑ふ肉体の騒々しい音を

夕立のやうにせはしないおしやべりを

木と水と草の匂ひのする大きい高声を

われわれは彼女と語る

川や野のかがやかしい精神をいつぱいにして、

木の下で、太陽の畑で

あふれてくる月夜の川で。

 

佐藤惣之助

「荒野の娘」所収

1922

 

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