詩の書棚(紀伊国屋新宿本店)

書店に行って、書棚を眺めるとそれだけでわくわくしてきませんか?
棚を作る、と言いますが、書棚の本の配置は、それだけで、それぞれの本の文脈を語るものです。そこで、詩の在庫が豊富な書店の書棚を撮影し、その内容をじっくりと検証しようと言うのが、この企画です。

まず第一番目は紀伊国屋新宿本店二階の詩コーナーの書棚から。撮影は2016年2/24です。

こちらの書棚はカリスマ書店員たる梅﨑実奈さんの選書により作られております。
さすがのセンスを感じさせる選書。具体的に見てみましょう。

まずは海外詩の書棚から。
写真をクリックすると拡大した画像が見られますよ!

まず、目立つのが吉川幸次郎の「杜甫詩注」十巻揃い。日本を代表する稀代の漢学者吉川幸次郎が生涯を掛けて編んだ渾身の著作です。
一篇の漢詩に詳細を極めた注を付けた作品。一度手にとって見て下さい。この注の詳細さに仰天すると思います。
これが十巻揃っているのを見ただけで感動です。分かってますな、という感じですね。
その他にもシェークスピア、ランボー、ジャン・ジュネ等、押さえるべき所はきっちりと押さえております。

そして海外詩書棚の二番目、パウル・ツェラン、マヤコフスキー、漢詩の関連書籍に並んで・・・・iichikoまであるではないですか!
ご存知の方は少ないかもしれませんが、あの焼酎のiichikoはかなり硬派の広報誌を出していまして、その密度の濃さは完全に広報誌のレベルを超えています。通常の書店で販売はしていないので、かなりなレアものと言っていいでしょう。

そしてこちらは日本の詩。
定番の現代詩手帖のバックナンバーから、宮沢賢治、金子みすず、立原道造のアンソロジーなど定番の書籍から、新書の解説書まで過不足無くラインナップ。

そして見よ!この現代詩文庫の品揃えを!ここまで数が揃っているのはやはり大型書店ならでは。さすが紀伊国屋書店。日本の書籍文化を代表する書店ですね!

しかし、まだまだこんなものではございません。さらに続き日本の詩人。若手詩人の最果タヒさんの詩集のPOPです。
その下にはちゃんと相田みつをの詩集も並んでいます。


そして、その下には長田弘、北村太郎がしっかりと品揃えされています。
北村太郎全詩篇の分厚さがやたらと目立ちますね!

そしてこちらは田村隆一の全集。その隣には谷川俊太郎がずらりと並ぶ。

そしてこちらはまどみちおの分厚い全詩集、吉野弘全詩集、吉本隆明詩全集、吉原幸子全詩など、圧巻の品揃え。


次は平台です。萩原朔太郎の猫町が目立ってますね。それと「月に吠えらんねえ」がちゃんと並んでおります。詩の棚にこの漫画が一緒に並んでいたのは私の知る限りこの書店だけです。

さらに現代詩手帖が三ヶ月分。そして中原中也賞を受賞した「長崎まで」にしっかりPOPが立っております。


こうして並べられるとやはり最果タヒさんの詩集の表紙が目立ちますね。個人的にはバナナタニ園の味のある表紙が好きです。こちらは吉本ばななさんの写真に、谷郁雄さんが詩を付けたもの。

そしてこちらの平台では茨木のり子のムックと料理の本。隣りには夏葉社の尾形亀之助の詩集が!近年再評価されている石原吉郎の詩集にPOPが付いています。

そしてこちらには最果タヒさんの手書きの色紙が二枚も!その下にはマヤコフスキーのかっこいい写真があります。

全体を通してみると、決してマニアックな品揃えに終始するわけでもなく、ポピュラーな所もおさえながら、マンガを一緒に並べてみたりして詩の書棚の間口を広く取ろうとしているのがよく分かります。ただそれだけでなく、マニアも唸らせる本がピンポイントでしっかり品揃えされています。
これだけの広いスペースを確保できるのは大型書店しか出来ないかもしれませんが、それを埋めようと思えば、かなりのセンスが求められるわけで、梅﨑さんの力量に敬服いたします。

さて、いかがでしたでしょうか?書棚の写真を見ているだけで、幸せな気持になってきませんか?アマゾンのリコメンドシステムもなかなかですが、書店の書棚には思いもよらぬ本との出会いの機会があります。首都圏にお住まいの方以外はなかなか紀伊国屋に足を運ぶ機会が無いと思うので、こちらの写真でバーチャルな書店めぐりを楽しんでもらえたら嬉しいです。

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