もう止さう。
ちひさな利慾とちひさな不平と、
ちひさなぐちとちひさな怒りと、
さういふうるさいけちなものは、
あゝ、きれいにもう止さう。
わたくし事のいざこざに
見にくい皺を縱によせて
この世を地獄に住むのは止さう。
こそこそと裏から裏へ
うす汚い企みをやるのは止さう。
この世の拔驅けはもう止さう。
さういふ事はともかく忘れて、
みんなと一緒に大きく生きよう。
見かけもかけ値もない裸のこころで
らくらくと、のびのびと、
あの空を仰いでわれらは生きよう。
泣くも笑ふもみんなと一緒に、
最低にして最高の道をゆかう。
高村光太郎
「大いなる日に」所収
1942
すごくいまの心境に沁みてきました。
ほんとうに いまそうありたい。
いつも 素晴らしい詩をありがとうございます。
戦争推進の詩を書くようになる光太郎は、まるで糸井重里のような言葉の使い方をしていたのですね。大好きな詩人だけに悔しいです。