新幹線

 満員、一箱丹九十人は乗っている。
 私には始発の岡山から東京まで四時間半だけれど、全部で考えれば平均三百時間以上がこの一箱につまっている。(その時間は殆ど誰も何もできず茫然としている。)
 四千時間ほどの列車がいま夕がたの背高泡立草の黄色な中を走っていく。

永瀬清子
「短章集/流れる髪」所収
1977

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