かすてらの

こげた匂をかぐときは

わたしはままを思ひだす。

 

らんらたの

ちやぺるの鐘をきくときは。

わたしはままを思ひだす。

 

南天の

紅実に雪のふるときは

わたしはままを思ひだす。

 

遠山に

銀の雨ふる冬がきた。

ままに逢ひたい冬がきた。

 

竹久夢二

春のおくりもの」所収

1928

 

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