ときどき
会社にいくのがいやになるから
いかないんだ
ベッドにひっくりかえって
ちりぢりばらばらの
友だちのことなんかかんがえている
ひとりで笑って
あれこのまえおれが笑ったのはいつだっけ
なんてかんがえたり
へんだろおれって
でも半月もぼんやりしてるとさ
金もなくなる食いものもなくなる
じゃかすかのびるのはひげばかりで
しかたがないから近所の
コンビニエンスストアでアルバイト
いがいと評判がよかったりしてさ
おれもはりきって あーあくたびれた
今日は帰るか なんて大声でいってみたり
へんだなおれって
まえの会社は病欠っていうのかな
月にいちどは電話があるんだ 母のところに
母はおろおろしているけれど
おれはなんだか筋肉がついちゃったし
背丈までのびたみたいだ
もちろんおれは書くのは苦手だから
何といったかな あの生涯ヒラ社員の
(子使いさんを夢みるひと)
に頼んで書いてもらう
おれの名前は出さないそうだけど
これ おれなんだ わかるかな
辻征夫
「河口眺望」所収
1993