彼は待つてゐる

彼は今日私を待つてゐる
今日は来る と思つてゐるのだが
私は今日彼のところへ行かれない

彼はコツプに砂糖を入れて
それに湯をさしてニユームのしやじでガジヤガジヤとかきまぜながら
細い眼にしはをよせて
コツプの中の薄く濁つた液体を透して空を見るのだ

新しい時計が二時半
彼の時計も二時半
彼と私は
そのうちに逢ふのです

尾形亀之助
色ガラスの街」所収
1925

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