夜の胸飾 ほのかな月の光りの木影の水のやうに
暗らい扉のむかうで私は睡眠の歌にゆられてゐる

靑い庭のラムプ 消えて行く幸福の足音のやうに
霧にしめつた枝と枝との中に その光りはちらばり

逃げてゆく影 美しい影 瀕死のラムプよ
靑銅の鐘は絶えず悲哀と恐怖を告げてゆく

その傍で しぼんだ薔薇の叢で 私を取圍く失心
ゆるやかな樹魂の呟く神秘を心地よく耳にしながら

告白と悔懺と祈祷と 石と水と火と
それら無言の囁 神のやうに惡魔に似て

漂泊に疲れし肉よ 巡禮に倦みし心よ
私は瞶める 永遠に閉ぢられて開くことのない窓を

楠田一郎
「楠田一郎詩集」所収
1938

2 comments on “

  1. 永遠 .. 全(スベテ) デアルトコロノ .. 無

    ’永遠 ,

    ナッタ ?

    ソ レ キ リ

    .. トリカエシガ ツカナイ ッ テ こ れ

    永遠 ニナッタ とき ニハナニモナシ

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