陰謀を抱かぬ男
男のふじつぼのように尖った肛門は華美だ 開いたまま過ごす
曲った股の間を占め 鰓と多くの触毛を持ち欲望するときうごく
常にそこがすっかり見える姿勢をとり 変えぬ
眠る際暗に穴をなし首を埋めてしまう
敵視する者には眼に卑猥な魔術の傘として映るので背後から見て蔑む
女にすらその部分で触れねばならず 避けるためにそれから厚い肉の被布を拡げ残忍に包む
無邪気であろう 男に廟と後架の区別がつかず
回廊の果て こもると色づいた甘藍のようになり 全身その器官で被われる
それにだけ承諾された男にとって他の機能は無益だ
男はその輝くものの底に溢れ 深い裂け目から濡れたぐにゃぐにゃの首や手を垂らし
胎児の優しさまで降りた蛆の視線を痙攣する穴の儀式に恋げかける
鎌田喜八
「エスキス」所収
1956