遠景

草原の上に腰を下して
幼い少女が
髪の毛を風になびかせながら
むしんに絵を描いていた。
私はそっと近よって
のぞいて見たが
やたらに青いものをぬりつけているばかりで
何をかいているのか皆目わからなかった。
そこで私はたずねて見た。
──どこを描いているの?
少女はにっこりと微笑して答えてくれた。
──ずっと向こうの山と空よ。
だがやっぱり
私にはとてもわからない
ただやたらに青いばかりの絵であった。

木山捷平
木山捷平全詩集」所収
1968

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