土をほっていました
庭のまんなかに 大きな深い穴を掘ります
弟はものを言いません
わたくしも黙っています
なぜほるの
ともきかなければ
なにのために掘るのか
考えてもみませんでした
弟の額に汗がにじんでいます
わたくしの掌には豆が出来ました
けれど
わたくしと弟は土を掘っています
父を埋めるためかもしれません
弟とわたくしは土を掘ることを
やめようとはしません
やめるのが こわいのかもしれません
虫が鳴いています
小松郁子
「鴉猫」所収
1979
土をほっていました
庭のまんなかに 大きな深い穴を掘ります
弟はものを言いません
わたくしも黙っています
なぜほるの
ともきかなければ
なにのために掘るのか
考えてもみませんでした
弟の額に汗がにじんでいます
わたくしの掌には豆が出来ました
けれど
わたくしと弟は土を掘っています
父を埋めるためかもしれません
弟とわたくしは土を掘ることを
やめようとはしません
やめるのが こわいのかもしれません
虫が鳴いています
小松郁子
「鴉猫」所収
1979