手に手に棒きれをもち石をもちおまえたちは
おれをとりかこんでしまつた
はじめはじようだんだとおれは思つたくらいだ
一つの石はいきなりとんでおれの目玉をぐしやりつぶし
つづいて石だ石だ石だ石だ
ぐしやりとまた
おれの胸はやられ
口からは血が

  あのいいにおいのするくさむらへ
  かえつてゆきとぐろをまき
  ひなたの音楽をゆつくりきき

匍つて逃げる
だめかもしれない
逃すな逃すな棒きれでぐいとくびを押さえ
口あいたまんま
舌はさわぎ

  くさむらくさむら
  まつくらぎらぎらひかつている
  かみなりの晩
  縞子さんとあいびきしたね縞子さん
  縞子さんはあのとき甘えておれに
 
がしやり頭をとうとうやられ

  おれに石を投げたおまえたちよ
  けれどもおれには立ちあがつておまえたちに石を投げかえすことができない

血と泥
ひんまがつて
おれはおまえたちのなすがままだ

    ああ夕やけ雲が
    あんなにきれいおまえたちの肩の上に
    風は凪いだようだな
    さあ棒きれと残りの石をおれの死骸のそばにほうりだして
    おまえたちは帰れ

鳥見迅彦
「けものみち」所収
1955

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