「絶対、次期支店次長ですよ、あなたは」
顔色をうかがいながらおべっかを使う、
いわれた方は相好をくずして、
「まあ、一杯やりたまえ」と杯をさす。
「あの課長、人の使い方を知らんな」
「部長昇進はむりだという話だよ」
日本中、会社ばかりだから、
飲み屋の話も人事のことばかり。
やがて別れてみんなひとりになる、
早春の夜風がみんなの頬をなでていく、
酔いがさめてきて寂しくなる、
煙草の空箱や小石をけとばしてみる。
子供のころには見る夢があったのに
会社にはいるまでは小さい理想もあったのに。
中桐雅夫
「会社の人事」所収
1979
肩書きが無くなれば、ただの人。
良い人間か逆かは 皮が剥げてありのままを晒す様に
思えます。