眺望

屋根といふものがなければ
暮しはできないものなのか
もの哀しい習俗のぐるりの
屋根屋根を濡らして
遥かなる狐の嫁入りが行く
青い風は僕の隣から
眺望を撫でてはゐたけれど
僕はこのまんま
美しい空つぽになりたくて
ほそい山径に群れてゐる
花蝋燭のやうな野苺に
すくないけれど僕も
眺望も呉れてしまつた

淵上毛錢
1950

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