竹売りが竹売りに来る
妻が竹売りと大声で話している
まけろ、まけぬの問答がつづく
やがて竹売りが去り
新しい青竹が軒ばたにたてかかる
青竹がからりとした新緑の空に映える
私は青竹をつたって天にのぼる
じつに毎日天にのぼる
じつに毎日天からはきおとされる
ああ、病癒えず いまは毎日はきおとされているのである
はきおとされては
またかけのぼる日のことを考え
またはきおとされているのである
私は竹のような痩せ腕をさする
妻はせわしいせわしいと 新しい
青い生きものをふるように物干し顔をふりまわし
陽あたりのいい場所をみつけている

遠地輝武
「遠地輝武詩集」所収
1961

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