すずめ

雀は常に楽しい
きょうもスガスガしくよく晴れている
太陽の光りを羽一杯に浴びて飛んでいる 

雀には頭脳がない
雀には考えることが必要でないからだ 

雀の頭の中から
雲が消え 鳥が消え 大地も消えてしまった

カラカラと頭の中で鳴っている
深い井戸の中へ石が落ちてゆくように
コロコロと音を立てている

それは木枯しでもなく
雪が崩れる音でもない

考えることは物の変化ヒズミに対応することである
ところで物の変化ヒズミを一切無視するなら考えることは不要である

急ぐことはない
多分雀は笑うだろう
夕陽のように笑うだろう
何を見ても
何を聞いても
雀は笑う
笑い飛ばすだろう  

その笑い声は雀には聞こえない
もはや消えてしまって
どこにもないからだ

どこにも何もない
有るとすれば
それは鳥の悲しそうな顔だけだ
鳥は泣いている
泣くことしか知らぬのだろう
濡れた涙の顔だけが消えのこっている

それを雀は塗り潰す
雀の体で塗りつぶす

高橋新吉
「高橋新吉詩集」所収
1957

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