お母さん
もし私が醜怪なひき蛙だったなら
あなたならどうします
おお 恋人ならば
たちまち目をまわしてしまう
燃えるように見つめてくれた目を
恐怖とにくしみにかえて
千里も遠くに去ってしまう
もしもまた妻ならば
子を残して家に帰ってしまう
なぜかというと
その子も私と同じひき蛙なのだから
でもお母さん
あなたならどうします
私がひき蛙だったなら
ひき蛙よりも
もっとみにくいいきものだったなら
きらわれるまむしだったなら
つられたあんこうのぶざまだったなら
もしもあなたに
それが私であることを告げたなら
村上昭夫
「動物哀歌」所収
1968
寓話の世界に入ったみたいで、日常の喧騒を振りかえって自分の生活を考えさせてくれる。