祈る言葉を知らざれば
われは祈らざるなり。
魂の安さは人に託すべきものにあらず。
たきものの烟にむせかへるとも
亡せ行きたる人は幸にあらず。
声を合せて呼び、そそりたつるとも
その生命が背負ひたる泥を黄金とするあたはじ。
誰か空なる同感と
嵐に驚きたる感激とに迷はんや。
われはただとこしへに御身を見る。
相並びて行くべき道を歩むべきのみ。
御身はさらに明かに生きよ。
御身が負へるものを
何人も代る能はざるなり。
祈る言葉を知らざれば
われは祈らざるなり。
水野葉船
1947