胴体から
首が
離れていていいわけはないように
指が腕から
足が脚から
離れていていいわけはない
しかし
腕から指が
脚から足が
離ればなれに飛散している情景は
鳥の一瞥が
その小さな網膜に まざまざと焼付けている
鳥は墜ちても
その情景は、小さな網膜と倶に腐化し去ることはないであろう
飛散した指は
足は
首は
その位置を恢復せねばならぬ
その位置を恢復せねばならぬ
(飛散した指が 足が 首が 瞑目するのはそのときである)
北川冬彦
「北川冬彦全詩集」所収
1988