うえからまっすぐ
おしこまれて
とんとん背なかを
たたかれたあとで
行ってしまえと
いうことだろうが
それでおしまいだと
おもうものか
なべかまをくつがえしたような
めったにないさびしさのなかで
こうしておれは
つっ立ったままだ
おしこんだ棒が
はみだしたうえを
とっくりのような雲がながれ
武者ぶるいのように
巨きな風が通りすぎる
棒をのんだやつと
のませたやつ
なっとくづくのあいまいさのなかで
そこだけ なぐりとばしたように
はっきりしている
はっきりしているから
こうしてつっ立って
いるのだ
石原吉郎
「石原吉郎詩集」所収
1969