若葉よ来年は海へゆこう

絵本をひらくと、海がひらける。若葉にはまだ、海がわからない。

若葉よ。来年になったら海へゆこう。海はおもちゃでいっぱいだ。

うつくしくてこわれやすい、ガラスでできたその海は
きらきらとして、揺られながら、風琴のようにうたっている。

海からあがってきたきれいな貝たちが、若葉をとりまくと、
若葉も、貝になってあそぶ。

若葉よ。来年になったら海へゆこう。そして、じいちゃんもいっしょに貝になろう。

金子光晴
詩集 若葉のうた」所収
1967

One comment on “若葉よ来年は海へゆこう

  1. 強烈な個性を発揮した詩を書いていた詩人が、このように、やさしい詩も書けるのだと思うと、とても不思議です。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください