あらゆるものをひきよせてゐるおまへの縫針。夜がある、花がある、電気の光りがある、そして私の幸福が。
おまへの指が縫ひつけるまでに、すでに私はおまへの着物の中にひそむ。
そして、美しく動くおまへの指の運びを後じさりしながら招いてゐる。
ここにゐるよ、ここにゐるよと私は呼ぶ。
おまへの仕事に見惚れながら、おまへに触れながら。
あらゆるものをひきよせてゐるおまへの縫針。
私の目蓋がある、睫毛がある。眼がある、そして私の心臓が。
竹中郁
「署名」所収
1936
あらゆるものをひきよせてゐるおまへの縫針。夜がある、花がある、電気の光りがある、そして私の幸福が。
おまへの指が縫ひつけるまでに、すでに私はおまへの着物の中にひそむ。
そして、美しく動くおまへの指の運びを後じさりしながら招いてゐる。
ここにゐるよ、ここにゐるよと私は呼ぶ。
おまへの仕事に見惚れながら、おまへに触れながら。
あらゆるものをひきよせてゐるおまへの縫針。
私の目蓋がある、睫毛がある。眼がある、そして私の心臓が。
竹中郁
「署名」所収
1936