木のあいさつ

ある日 木があいさつをした
といっても
おじぎをしたのでは
ありません
ある日 木が立っていた
というのが
木のあいさつです
そして 木がついに
いっぽんの木であるとき
木はあいさつ
そのものです
ですから 木が
とっくに死んで
枯れてしまっても
木は
あいさつしている

ことになるのです

石原吉郎
日常への強制」所収
1970

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