喪のある景色

うしろを振りむくと
親である
親のうしろがその親である
その親のそのまたうしろがまたその親の親であるというように
親の親の親ばっかりが
むかしの奧へとつづいている
まえを見ると
まえは子である
子のまえはその子である
その子のそのまたまえはそのまた子の子であるというように
子の子の子の子の子ばっかりが
空の彼方へ消えているように
未来の涯へとつづいている
こんな景色のなかに
神のバトンが落ちている
血に染まった地球が落ちている

山之口貘
山之口貘詩集」所収
1940

One comment on “喪のある景色

  1. さいごのことばがどきっとする。生き抜くため、悪をなさなかった先祖はいない。そんなすべてをふまえいのちのつながりに感謝したい

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