さんたんたる鮟鱇

――へんな運命が私を見つめている  リルケ
 
顎を むざんに引っかけられ
逆さに吊りさげられた
うすい膜の中の
くったりした死
これは いかなるもののなれの果だ

見なれない手が寄ってきて
切りさいなみ 削りとり
だんだん稀薄になっていく この実在
しまいには うすい膜も切りさられ
惨劇は終っている

なんにも残らない廂から
まだ ぶら下っているのは
大きく曲った鉄の鉤だけだ

村野四郎
抽象の城」所収
1954

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