平和

峠の上から
人々の働いてゐるのを見ると
平和そのものゝやうだ
麦をかつてゐる者
田植をしてゐる者
馬で田畑を耕してゐる者
仔馬は母親の廻りをとびはねてゐる。
それを太陽は慈悲深く
しかし厳かに照らしてゐる。
平和そのものゝやうだ。
平和の神は太陽と共に
この世を照してゐるのだが
人々はまだそれを受け入れることが
出来ないのではないか。
神は人々と共に働いてゐるのだが
人々はそれに気がつかないのではないか。

武者小路実篤
無車詩集」所収
1941

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