詩集の美「せんはうたう」

今回の詩集の美は谷川俊太郎さんの「せんはうたう」です。

本とはただ単に情報を伝える箱ではなく、装丁によって定義された全体のパッケージ、つまり一個の作品なのだと思います。それを強く感じさせられたのが今回ご紹介する「せんはうたう」です。
本屋で一目見た時から、きれいな本だな、手元に置いておきたいなと思いました。電子書籍では、味わえない世界です。

出版社は「ゆめある舎」。谷川俊太郎さんを義理の父親に持つ谷川恵さんが、一人で立ち上げた出版社だそうです。

まずは全体像をご覧ください。

IMG_2108

青い表紙の本が白いシンプルな絵のブックケースに包まれています。挿画は望月通陽(もちづきみちあき)さんです。光文社古典新訳文庫の表紙でおなじみの方。
このぎざぎざにカットされたブックケースが目を引きますね。
IMG_2109

ケースを開けると美しい青い表紙の本が現れます。こちらは谷川俊太郎さんのご子息で、作曲家である谷川賢作さんの「昼の鳥」の楽譜に望月さんが絵を描いたものです。
広げるとこんな感じです。
IMG_2112

元々、この「せんはうたう」の本が生まれたきっかけは、谷川賢作さんの楽譜を出版する際に望月さんに表紙の絵を依頼したところ、61枚ものスケッチをいただき、このまま埋れさせてしまうにはしのびないと思われたことだそうです。
谷川俊太郎さんにこの絵をお渡ししたところ、24枚の作品に詩をつけてくださり、一つの作品として完成されました。

このように一枚の絵に対して一篇の詩が寄せられています。

IMG_2123

全体のデザインはDirectionQの大西隆介さん、製本は美篶堂によるものです。
実に丁寧で素晴らしい仕事をしていると思います。
例えば、このケースの小口の写真をごらんください。

IMG_2124

内側が表紙と同じ美しいブルーに印刷されています。

また、それぞれのページはこのように二つ折りの紙でまとめられています。

IMG_2118

ご覧になると分かると思いますが、こちらも薄い青が付けられています。
この素晴らしい装丁に対して、日本タイポグラフィ年鑑2014受賞エディトリアル部門ベストワーク賞が贈られています。

このように凝ったつくりなので原価率が高く、通常の取次ぎを通せないそうです。ただ、作者の谷川さんより定価は2千円以下でという注文があったそうで、定価は1800円となっています。

ネットでのご購入はこちらよりどうぞ。Amazonにも在庫があるようです。
また実際に手にとって見たい方はこちらのページに在庫している書店のリストがあります。
私は荻窪のTitleさんで購入しました。良い本屋ですよ!

 当サイトではこの「せんはうたう」から一篇の詩を紹介させていただいています。こちらも是非ご覧ください。

「せんはうたう」には望月さんの書いた後書きが載っていますが、この「くつした」の話もなかなか味わい深いです。こちらは是非購入の上、ご一読を!

追記です。
「せんはうたう」の製本を担当された美篶堂の上島明子さんのインタビュー記事です。
とても良い記事なので、よろしければこちらもどうぞ。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください