赤城駅というのが終点。
家の近くに
<この人>がむかし泳いだ川があって
とてもいいところだった。
お母さんと一緒に
おうちの人に挨拶してきた。
式は──キリスト教で、
と君はいった。
<この人>は赤い顔をしていたが、
詩のはなしになると
すぐに夢中になった。
深大寺では
風車を買い、
君は風で風車がよくまわるのを
ふしぎがっていた。
ボヘミアに行ってみたい、と言い、
おでんをたべたい、と言い
時間がない、と言いあい、
借りてきた大きな自動車は
<君の運転では>
木洩れ陽の林の中を
ぐるっと廻っただけで
人生のように重そうで。
──ここから
どこに行くのか。
レースのついた
子どもっぽい服がまだ似合う
小さなフィアンセ。
もうじき、
君らのオルガンを鳴らす
秋がくる──。
菅原克己
「菅原克己全詩集」所収
1988