私達の国の首府 東京の真中に在る
掌のやうにちつぽけな公園
その中央に によつきり立つた一本の円柱の天頂へ
一羽の小鳥が どこからともなく飛んで来て
こともなげに ちよつととまつた
初夏のひるさがり
低い無趣味な乳色の空は
腹立たしい程の単調さで私の頭を圧へつける
石垣の端の電柱に靠れて
Sandwichmanがこくりこくりと居眠りしてゐる
生暖かい微風が ときをり埃つぽい広場に小さい旋風をたてる
その後方には こんもりした若い杉の木の森がある
ところどころ禿のやうな赤土の見える緑の芝生に
どこかの小僧が一人
一生懸命犬の子を弄つてゐる
多田不二
「夜の一部」所収
1926