楽しさも
よろこばしさも
花と血の船をあたためて
風の旗とともに
田舎路はひらける

一歩は一歩とこの世を忘れてしまひ
明るみから遠いところの深みへ
水車のやうに沈み
肩を天にふれ
手は地球のよろこび羽搏く

すき透るまでに華やかなるぐるりよ
柄の無い樹々の傘をさしたる自然よ
この路を真直ぐに行くと
夢の世界へゆくのであらう
他に行くべき路はないのであらう

佐藤惣之助
「華やかな散歩」所収
1922

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